今日は、よくある労働紛争に関する裁判例を取り上げてみたいと思います。
生産年齢人口は増えていないのに、労働に関する紛争は年々増加傾向にあるようです。
時間外手当の未払いがきっかけで訴えられ、割増賃金まで支払うはめに
ある会社では、就業規則上は会社の1日の労働時間が7時間となっていましたが、実際にはサービス残業が行われていて、サービス残業が深夜にまで及ぶこともありました。
訴えられるきっかけとなった事件は営業成績の悪い社員をクビにしたことでした。
クビにした社員が労働基準監督署に訴えたことで労働基準監督官が会社に訪ねてきたのです。
労働基準監督官がタイムカードを調べてみると残業時間分の賃金が出てなかったので、社長は時間外手当の支払いを命じられました。
休憩時間は労働時間ではありませんが、会社の就業規則は古く、社長が法律を理解していないときに作成されたものでした。
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する場合は届けることになります。そのため、とりあえず提出しただけの就業規則でした。
法律では、1日の労働時間が決められていて、就業規則を実態に合わせて見直しをしなかったので余計に時間外手当を支払うはめになりました。
さらに割増賃金で除外される手当が家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住居手当、臨時のもの、1か月を超えるごとに支払われる賃金(それぞれの頭文字をとって「かつべしじゅうたくをかけてりいち」)以外は割増賃金の基礎とされるので、営業手当も規定がなければ、時間外手当の底上げになってしまいます。
結局、社長は他の従業員の時間外手当も支払わされました。
労働基準法の労働時間
労働基準法では、「使用者は、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならない。1週間の各日については、休憩時間を除き1日について8時間を超えて労働させてはならない。」という決まりがあります。
例え就業規則によって労働時間と決められていても、実際には労働者が使用者の指揮命令下にあるような場合は、休憩時間であっても自由利用が保障されていませんから労働時間になる可能性が高いです。
よくあるのが事業場の移動を伴うような移動時間ですが、業務に従事するために必要な移動を命令され、当該時間の自由利用が労働者に保障されていなければ労働時間に該当するといった判例もあります。
社員はそう簡単に解雇できない
解雇というのは、使用者の一方的な意思によって労働契約を解除することですから、労働者にとっては生活の手段を失うことにもなります。なので、法律では解雇について規制が設けられています。
例えば、労働者が業務中にケガをしたり病気になって療養している場合は、休業期間と休業後30日間は解雇してはなりません。
また、解雇する場合も解雇する30日前に予告が必要です。もし、30日前に解雇した場合は不足する日数分の平均賃金を支払わなければなりません。
しかも、解雇については、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」ことが法律によって決められているので、労働者に落ち度があることを客観的に認めさせる必要があります。
会社の帳簿の備え付け
会社には法律で定められた法定三帳簿などの帳簿の備え付けが必要です。
法定三帳簿とは、「労働者名簿」、「賃金台帳」、「出勤簿」の3つの書類をいいます。
労働者の氏名や住所、雇い入れの日等を記載してある労働者名簿、労働者に賃金を支払った都度記入しておく賃金台帳、労働者の労働時間を記録した出勤簿(タイムカードなど)です。
割増賃金の算定
企業が三六協定などによって法定労働時間を延長させたり、法定休日に労働させた場合は、その時間について通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内で政令で定める率以上の率の割増賃金を支払わなければなりません。
しかも、労働させた時間が1カ月60時間を超えた場合は、5割以上の率の割増賃金を支払わなければいけません(中小企業除く)。
また、企業が午後10時から午前5時までの間に労働させた場合は、その時間の労働について通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないことになっています。
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最近では、同一労働同一賃金をめぐって再雇用されたトラック運転手が会社を訴えたり、日本郵便が正規職員とに差があるのはおかしい、と何かと話題になっており政府も迷走しております。
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