ちょっと前に、「#Me Too」といったセクハラに対する運動が、アメリカを席巻していました。
日本でも話題となり、セクハラ被害を告発する人も出てきました。
ところが、この「#Me Too」運動の中心的な存在であった女優のアーシア・アルジェント自身が性的暴行の加害者だったことが発覚してしまいました。
実は、セクハラ問題は、生きている限り誰しもが加害者となる問題です。
最近では、LGBT(レズ・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)についても取り上げられることも多くなり、問題が複雑化しています。
ハラスメントとは
ハラスメントとは、嫌がらせ・いじめになる行為のことをいいます。
ハラスメントは、自分の意図した発言に関係なく、相手側が不快に思ったり、傷つけられれば該当するため、誰しもが加害者となる可能性があります。
ハラスメントの代表的なものにセクシャルハラスメント(以下セクハラ)がありますが、セクハラは本人の意図に関係なく、性的な発言で相手を不快にさせればセクハラになります。
セクハラというと、女性が被害者となることを思い浮かべる人は多いのですが、セクハラ被害は訴えたり話題にならないだけで男性も受けています。
ある人が何とも思わないことでも、別の人なら不快に感じてしまうことがよくあります。
企業においてハラスメントが起こると、生産性の低下や人材の喪失の原因になります。
そういった意味では、ハラスメントを放置しないことが大切です。
LGBTとは
LGBTは、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの頭文字をそれぞれ取った用語です。
レズビアンは女性の同性愛者、ゲイは男性の同性愛者、バイセクシャルは両性愛者、トランスジェンダーは生まれたときの性別と自分の中で認識している性別とが異なる人をいいます。
LGBTの人は、12人に1人の割合でいるとも言われ、企業にとってもLGBTの問題は避けて通れないものとなっています。
最近は、LGBTが取り上げられることも増えてきましたが、まだまだ問題が解決しているとは言えません。
他人の価値観や考えを否定するのは要注意
ハラスメントの問題は、多様な生き方に対して受け入れることができるかどうかが関係します。
自分と違う価値観や考え方を否定したり、除くことはハラスメントにつながります。
ハラスメントが行き過ぎる場合は、どういったことがハラスメントにあたるのかなどの研修を行うようにして行為者に分かってもらわなければ、会社全体の生産性低下や社員の退職を招くことにもなりかねません。
ハラスメントの問題は、会社の成長に影響を与えかねない問題です。
職場のパワーハラスメント
パワーハラスメント(以下パワハラ)は、同じ職場などで働く労働者に対して、会社の地位や職務上の立場の優位なことを利用して、相手に不快な気持ちにさせたり、嫌がる行為をすることです。
行為者が教育と思っていても、相手に対して人格を尊重したり、成長のために行うものでなければ、パワハラととらえられても仕方ありません。
パワハラが原因で、部下がうつ病を発症したり、やる気を失い著しく生産性が低下したり、退職者が多くなって企業の継続が困難になるといったことが起きています。
最悪の場合は、パワハラ被害を受けた労働者が自殺にまで追い込まれることもあります。
マタニティハラスメント
「マタニティハラスメント(以下マタハラ)」とは、妊娠、出産した人が、業務上の支障をきたすという理由で退社を勧められたり、職場前と待遇が異なるなど、妊娠や出産を理由に精神的、肉体的な嫌がらせを受けることをいいます。
妊娠・出産したことを理由に解雇、降格させたことで、労働者から訴えられることも起きています。
育児休暇後に解雇されたことで裁判となり慰謝料を支払うことになった企業や、妊娠・出産を理由に降格させた労働者から訴えられて損害賠償を支払うことになった企業もあります。
妊娠・出産を期に会社の時短制度を利用した人に対して、周囲の人の仕事が増えたことから嫌がらせや威圧的な発言をしてしまうとマタハラになる可能性があります。
マタハラがきっかけで会社全体の士気が下がることもあります。
ジェンダーハラスメント
「ジェンダーハラスメント」は、性別をもとにした自分の価値観を相手に押し付ける嫌がらせです。
例えば、「女性なのに掃除ができない」「男なのになよなよしている」「女性には力仕事は無理」「男のくせに女々しい」「女性だけにお茶くみ係をさせる」といったものがジェンダーハラスメントにあたります。
私も無意識のうちにジェンダーハラスメントをしていたのでは……と、思うことがあります。
歴史小説なんかが好きな人は、男はこうでなければならないといった考えを持つ人も多いのでは……?
こういう人は、気を付けないと無意識のうちにジェンダーハラスメントにあたる行為をしているかもしれません。
特にLGBTの人は、ジェンダーハラスメントがより複雑な問題となる可能性があります。
会社のハラスメント対策
ハラスメントに対して、会社は相談窓口を設置して労働者からの相談を受ける体制を整えることが大事です。
ただし、相談窓口を設置したからには、相談を受けたら適切に対処することが必要です。
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会社は中立な立場を維持し、事実確認と行為者に対する注意や教育を行うことも必要です。
ハラスメントが起きた場合も、迅速かつ適切に対処することが退職者を防ぐことにもつながります。
少子高齢社会の流れを止めるのは困難なので、今後は多様性の社会を受容しなければ、企業が生き抜いていくのは難しくなるでしょう。
厚生労働省のハラスメントに対するサイト https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/