健康保険の加入者は、業務外の疾病、負傷、死亡及び出産について、費用の一部を負担するだけで健康保険から保険給付が受けられます。
ちなみに業務中の疾病、負傷、死亡等については、労働者災害補償保険(通称労災)の対象です。
健康保険の給付には、療養の給付、入院時食事療養費、入院時生活療養費、保険外併用療養費、療養費、訪問看護療養費、移送費、傷病手当金、埋葬料(埋葬費)、出産育児一時金、出産手当金といったものがあります。
また、被扶養者の給付についても、傷病手当金や出産手当金を除いて似たようなものがあります。
健康保険の療養の給付
健康保険の被保険者は、病気やけがをして医療機関で診療を受けた場合でも、被保険者証を提示すれば一部負担金を支払うことで済みます。
ただ、美容整形の手術や健康診断、妊娠中絶等は、療養の給付の範囲外とされています。
定期健康診断は本来は療養の給付の対象ではありませんが、健康診断を受けたことによって病気の疑いがあると診断され、精密検査を受けた場合は療養の給付の対象になります。
療養給付の一部負担金の割合
①.70歳~74歳(誕生日が昭和14年4月2日から昭和19年4月1日までの人)・・・1割負担
②.70歳~74歳(誕生日が昭和19年4月2日以降の人)・・・2割
③.6歳に達する日以後の最初の3月31日まで・・・2割
④.①~③以外の人・・・3割
①と②であっても、所得区分が現役並み所得者に該当した場合は3割負担となります。
現役並み所得者とは、標準報酬月額が28万円以上である70歳以上の被保険者とその被扶養者をいいます。
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入院時食事療養費
被保険者が入院したときは、保険医療機関から食事の提供を受けることになります。
この食事に要した費用については、被保険者が食事療養標準負担額を負担し、残りの費用について健康保険制度から入院時食事療養費として現物給付されます。
食事療養費 - 食事療養標準負担額 = 入院時食事療養費
1食あたりの食事療養標準負担額
一般 | 460円 |
指定難病患者・小児慢性特定疾病児童等 | 260円 |
住民税非課税世帯の人 | 210円 |
住民税非課税世帯の人で、入院日数が90日を超える場合 | 160円 |
70歳以上で所得が一定基準に満たない人 | 100円 |
入院時生活療養費
療養病床に入院する65歳以上の被保険者は、食事、水道光熱費に関する費用(生活療養)について、生活療養標準負担額を除いた入院時生活療養費が支給されます。
生活療養標準負担額は、平均的な家計における食費、水道光熱費等をの費用について、介護保険法に規定する食費の基準費用、居住費の基準費用を考慮して厚生労働大臣が定めた額をいいます。
生活療養費 - 生活療養標準負担額 = 入院時生活療養費
生活療養標準負担額(65歳以上)
食費 | 居住費 | |
一般で医療区分がⅠ | 1食460円(管理栄養士いないと420円) | 1日370円 |
一般で医療区分がⅡ・Ⅲ | 1食460円 | |
一般で難病患者等 | 1食260円 | 0円 |
住民税非課税世帯 | 1食210円 | 1日370円(難病患者は0円) |
70歳以上で所得が低い人 | 1食130円 |
保険外併用療養費
健康保険では、保険が適用されない診療については、診療費の全額が自己負担となります。
ただし、被保険者が高度の医療技術を用いた療養(評価療養)を受けたとき、特別の病室の提供を受けたとき(選定療養)、患者の申出によって高度の医療技術を用いたとき(患者申出療養)は、保険外併用療養費が支給されます。
保険の対象にならない部分は自費ですが、通常の健康保険が適用される部分については、一部負担金を支払えば残りの額は保険外併用療養費として現物給付となります。
評価療養が10万円、健康保険の対象(基礎部分)が10万円でれば、自己負担額は10万円+10万円×0.3(3割負担)となります。
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療養費
療養の給付は現物給付ですが、やむを得ない事由によって被保険者証が提示できなかったりして自費で受診した場合は、後から申請することにより、療養費(現金給付)を受け取ることができます。
近くに保険医療機関がなかったり、海外で医療を受けた場合等も対象です。
申請には療養費支給申請書が必要です。
訪問看護療養費
被保険者が医師の指示により訪問看護ステーションの訪問看護を受けた場合は、保険者が必要と認めれば訪問看護療養費が支給されます。
移送費
移動が困難な被保険者が、病気やけがにより療養の給付を受けるため、移送された時は、保険者が必要であると認めれば移送費が支給されます。
移送費の額は、最も経済的な通常の経路及び方法により移送された場合の費用に基づいて算定した額です。
移送費は、実際に移送に要した費用の額が上限となります。
埋葬料(埋葬費)
被保険者が死亡したときは、その被保険者によって生計を維持していた者がいて、埋葬を行う場合(被扶養者でなくてもいい)に埋葬料(5万円)が支給されます。
また、家族以外の人が埋葬を行った場合は、埋葬を行ったものに対して埋葬に要した費用(5万円の範囲)が埋葬費として支給されます。
傷病手当金
被保険者が療養のために働くことができなくなったときは、4日目以降から労務に服することができない間、傷病手当金が支給されます。
イ、療養中であること
ロ、働くことができないこと
ハ、継続した3日間の待期を満たしたこと
支給額は、1日当あたり、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2の額です。
なお、報酬の全部または一部を受けることができるときは傷病手当金は支給されません。
ただし、その額が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。
出産育児一時金
被保険者や被扶養者が出産したときは、出産育児一時金が支給されます。
出産育児一時金の額は、1児につき40万4千円で、医療機関が産科医療補償制度に加入していれば1万6千円が加算されます。
出産育児一時金の直接支払制度を利用した場合は、出産育児一時金直接医療機関に支給されるため、被保険者が医療機関へまとめて支払う出産費用負担を軽減できます。
希望しない場合は、出産費用を窓口で支払い、後日申請によって一時金として受けられます。
出産手当金
被保険者が出産したときは、出産の日以前42日(多胎妊娠は98日)から出産の日後56日までの間において、欠勤したときは出産手当金が支給されます。
出産手当金の額の算定は、傷病手当金と同じ方法で算定します。
出産手当金の支給額は、1日につき出産手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2が支給されます。
なお、出産した場合でも、報酬の全部または一部を受けることができるときは支給されません。
報酬の額が少ない場合は、差額が支給されます。