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労災保険法

労災保険での過労死ライン

更新日:

働く場合の最低基準を定めた法律が労働基準法です。

労働基準法では、一日の労働時間を8時間まで、週の労働時間を40時間までと定めています。

 

労働時間は、労働者の生死にかかわることもある大きな問題です。

労働時間を規制しなければ、労働者を死ぬまで働かせることにもなりかねません。

一日の労働時間を8時間に規制しているのは、働き過ぎによって労働者が健康を損なったり、命を失ったりしないためといえます。

 

しかし、実際には労使協定を締結して届出ておけば、時間外労働や休日労働をさせても、違反の罰則の適用を受けません。なぜなら、この労使協定には免罰的効力があるからです。

ただし、時間外労働や休日労働をさせた場合は、その労働時間に対する賃金と一定割合の割増賃金を企業は支払わなければいけません。もしも、残業してるのに賃金が支払われなければ、違法になります。

 

過労死とは

そもそも過労死とは何なのでしょうか?

 

過労死とは、労働のし過ぎたことによって死亡した場合をいいます。

 

どれくらい労働したら過労死になるかは、一人一人体力が違いますし、仕事内容も違うので一概には言えません。

 

過労死の場合は、業務上の原因で死亡したことになるので、過労死と認定されれば労災保険の対象となります。

そのため、労災保険では一応、過労死に対する認定基準が設定されています。

 

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労災保険の過労死の対象となる疾病(病気)

労災保険の対象になるには、業務上の疾病である必要があります。

労災保険での業務上の疾病とは、業務と相当因果関係にある疾病のことをいいます。

相当因果関係なんてあまり聞きなれない言葉ですが、業務と関係ない疾病は対象外ということです。まあ、当たり前ですね。

 

労災保険では、業務上の疾病を保険給付の対象としていますが、業務上の疾病は厚生労働省令に列挙されており、これに該当するものが業務上の疾病として認定されます。

 

過労死というと、働き過ぎによって脳や心臓に異変が起こって死亡することが考えられます。

長期間にわたって働き過ぎると、脳血管や心臓を憎悪させてしまい、これによって脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋大動脈瘤、心停止、狭心症、高血圧性脳症またはこれらの疾病に付随する疾病を起こさせます。

 

少し前にも働き過ぎが原因でうつ病のようになってしまい、うつが原因で自殺した人がニュースになっていました。

過労死というと、働き過ぎたためにある日突然ポックリと亡くなってしまうと思うかもしれませんが、実はうつが原因で自殺した場合も、過労が原因の死亡として労災認定されることがあります。

 

労災保険の過労死

1.長期間にわたる長時間の業務その他血管病変等を悪化させる業務による脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧症性脳症、心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤またはこれらの疾病に付随する疾病

2.人の生命にかかわる事故への遭遇その他心理的に過度の負担を与える事象を伴う業務による精神および行動の障害またはこれに付随する疾病

1.脳血管疾患および心臓疾患といわれています。

2.心理的負荷による精神障害をいわれています。

 

労災保険の認定基準

労災保険では、脳血管疾患および心臓疾患、心理的負荷による精神障害について、それぞれ認定要件があります。

 

脳血管疾患および心臓疾患の認定基準

以下のような場合に、過重負荷を受けたことにより脳血管疾患及び心臓疾患(労基則別表第1の2第8号)を発症したとして扱われます。

認定要件

1.発症直前から前日までの間において、発症状態を時間及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと(異常な出来事)

2.発症に近接した時期において過重な業務に就労したこと(発症前おおむね1週間に)

3.発症前の長期間にわたって、疲労の蓄積をもたらす過重な業務に就労したこと(発症前おおむね6か月)

 

1.異常な出来事には、極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常な事態、緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態、急激で著しい作業環境の変化などが該当します。

 

2.過重な業務にあたるかどうかは、労働時間、不規則な勤務、長時間の勤務、出張の多い業務、深夜勤務などを考慮したうえで判断されます。

 

3.恒常的な長時間労働では、疲労の蓄積が生じることが多く、発症前1か月から6か月の間に1か月あたりおおむね45時間以上時間外労働がある場合は、業務と発症との関連性が強まるとされています。

 

心理的負荷による精神障害の認定基準

心理的負荷による精神障害の労災認定は、次の3つの要件を満たした疾病が対象です。

認定要件

1.対象の精神障害を発症していること

2.認定対象の対象となる精神障害の発症前おおむね6か月間の間に、業務による強い心理的負荷が認められること

3.業務以外の心理的負荷及び個体側要因により対象の精神障害を発症したとは認められないこと←業務が原因であること

 

業務による強い心理的負荷とは、業務による出来事が、その後の労働者に強い心理的負荷を与えているような場合をいいます。

心理的負荷の判断は、同種の労働者が一般的にどのように受け取るかといったことから客観的に判断されます。

 

おわりに

いかがだったでしょう、労災の認定要件は、改正もあるので数年前とは違ったものになることも珍しくありません。

抽象的な文言が多いのは、客観的、総合的に比較しなければならなかったりするからです。

 

最近になって精神障害での労災認定が認められることが増えてきた中、若い人の自殺が増えているそうです。

 

働き方改革により、時間外労働の上限が罰則付きで設けられましたが、特例もありますし、業務間インターバル規制も強制ではないので、労働者にとって働きやすい社会になるかは今後次第です。

 

 

参考

厚生労働省「平成30年度過労死等の労災補償状況を公表します

「脳血管疾患・心臓疾患の労災認定要件」

「精神障害の労災認定要件」

 

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