人生設計に大事な社会保険について

社会保険についての話

労働基準法 ニュース・データ

富士保安警備に残業代支払い命令【富士保安警備事件】

更新日:

富士保安警備事件からみえるのは、たとえ名目上が仮眠時間でも、実際には労働から解放されていなければ、それは労働時間になるということです。

仮眠時間は実質的な内容で判断されるということを明らかにしています。

事件概要

富士保安警備の元従業員2人が、学生寮の警備員として仮眠もとれずに勤務したのにもかかわらず、残業代が支払われなかったとして、元勤務先に対して未払い賃金約1,200万円の支払いを求め、「付加金」を含めた合計約1,200万円の支払いを東京地裁が命じた事件。

 

元従業員2人は、日本語学校の外国人寮や大学の学生寮の警備員をしていたが、やがて体調を崩して退職することになった。

元従業員の2人は、夜勤勤務の際は2時間おきに巡回をし、仮眠時間でも守衛室を離れることができず、深夜でも騒音に対する近隣からの苦情電話が頻繁にかかってきて対応に追われて仮眠ができる状況ではなかった。

それに対して、同社は「仮眠は労働時間ではない」と主張したが、裁判所は「仮眠時間でも労働から解放されていたとは言えない。」とした。

 

各シフトの日給額をもとに、1時間当たりの賃金額を算定してみると、最も低賃金のシフトでは時給が378円と東京の最低賃金を大きく下回り、裁判所は悪質として未払い賃金の全額について付加金の支払いを命じた。

 

仮眠時間は労働時間ではないか

労働時間とは、「使用者の明示又は黙示の指示によって労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいうと労働基準法32条で定められています。

 

最高裁の判例では、仮眠時間が労働時間に該当するかどうかは、「実作業に従事していない仮眠時間が労働基準法の労働時間に該当するか否かは、使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価できるか否かにより客観的に定まるというべきである。仮眠時間であっても労働時間からの解放が保障されていない場合には労働基準法上の労働時間にあたるというべき」としています。

 

このように、例え会社の規定で「仮眠時間は労働時間ではない」としてあっても、仮眠時間が労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものかどうか客観的に決まるのであって、労働協約、就業規則、労働契約等の定めいかんによって決定されるものではありません

つまり、いくら会社が「仮眠時間は労働時間ではない」と訴えたり、労働者と労働契約を締結したとしても、労働者が労働から解放されていない限り、仮眠時間とは認められることはないということです。

労働時間から解放されていたかどうか

労働時間から解放されているかどうかは、使用者の指揮命令下にあったかどうかがポイントとなります。

 

仮眠時間であっても業務が義務付けられていて、労働者の自由利用が保障されていない休憩は使用者の指揮命令下にあるといえますので、労働時間に該当すると考えられます。

反対に仮眠時間中の業務が全く無く、完全に労働からの解放が保障されているのであれば、使用者の指揮命令下にあるとはいえません。

 

労働基準法34条1項では、「使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなけれなならない。」としていますが、使用者の指揮命令下になく自由利用が保障されているから休憩時間というわけです。

 

誤解しやすいものには、待機時間、いわゆる手待時間がありますが、待機時間も指揮命令下にあることから一般的には労働時間とされています。

付加金とは

この裁判では、付加金の支払いが命じられました。

付加金の支払いについては、「裁判所は、解雇予告手当、休業手当、割増賃金又は年次有給休暇中の賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、使用者が支払わなければならない金額についての未払い金のほか、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができる。」とされています。

 

付加金は、いわゆる制裁金ですが、付加金については限られています。

未払い金に加えて同じ金額の支払いを命じられるとなるとそれなりの金額を覚悟しなければならないこともあります。

最低賃金法では、賃金の最低基準を定めています

使用者は、最低賃金法で定める最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないとされていて、最低賃金額は時間によって定められています。

最低賃金は、アルバイトやパートといった雇用形態に関係なく適用されます。

最低賃金額には、都道府県ごとに定める地域別最低賃金と、一定の事業又は職業について任意に決定される特定最低賃金がありますが、地域別最低賃金は都道府県ごとに必ず定められるのでこちらの方が馴染みがあるはずです。

 

2018年2月においては、東京が958円でトップ、次いで神奈川の956円、大阪909円、愛知871円と続いてます。

 

平成30年度の最低賃金も全国平均で26円引き上げられる見通しです。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000172722_00001.html

 

最低賃金が過去最大の引き上げになる見込み

 

-労働基準法, ニュース・データ
-, ,

Copyright© 社会保険についての話 , 2024 All Rights Reserved.