労働保険や社会保険は、毎年何かしらの改正があります。
時代ごとの実態に合わせるためには必要なのでしょうが、法律ができた頃と比べるとだいぶ形が変わってきました。
今までは、老齢年金を受けるためには、保険料納付済期間と保険料免除期間等を合算した資格期間が25年以上必要でしたが、8月1日からは資格期間が10年以上に短縮されることになります。
国民年金の受給資格の要件は、厚生年金にも影響するのでいい改正だと思います。
どんな人が国民年金の被保険者になるか
国民年金では、「強制加入被保険者」と「任意加入被保険者」の被保険者がいます。
日本では、国民皆年金を採用しており、国民年金については強制加入が原則なので強制加入被保険者と呼ばれるのです。
強制加入被保険者には、自営業者や学生などが対象の「第1号被保険者」と、厚生年金被保険者が対象の「第2号被保険者」、第2号被保険者の配偶者が対象となる「第3号被保険者」の3種類があります。
よくある誤解に、「会社員の人は厚生年金に入っているから国民年金は関係ない」ということをいう人がいます。
会社員の人は、確かに厚生年金の被保険者です。
しかし、厚生年金の被保険者は国民年金の第2号被保険者でもあります。つまり、会社員の人は2つの年金制度に加入していることになります。
また、第3号被保険者は第1号被保険者のように保険料を直接納付することはありませんので、これも誤解される原因だったりします。
第3号被保険者は、保険料を支払っていないのに年金を受け取れるのはおかしいという人もいます。
厚生年金保険制度の拠出金から負担しています。
第1号被保険者
第1号被保険者の要件は次のすべてを満たす人です。
1.日本国内に住所を有する人
2.20歳以上60歳未満の人
3.厚生年金保険法に基づく老齢給付等を受けることができる人でないこと
4.第2号被保険者と第3号被保険者でないこと
国内居住要件があるのは第1号被保険者だけです。
第2号被保険者
第2号被保険者は次の人がなります。
1.厚生年金保険の被保険者であること
2.老齢年金の受給権を有する65歳以上の人でないこと
第1号被保険者と異なり、海外に居住していても第2号被保険者になることがあります。
厚生年金のでは年齢要件がありませんが、65歳以上になると老齢年金の受給要件を満たす人が多いので、被保険者資格を喪うのです。
第3号被保険者
以下のすべてを満たす人は、国民年金の第3号被保険者になります。
1.20歳以上60歳未満である人
2、第2号被保険者の配偶者であって、主に第2号被保険者の収入によって生計を維持されている人
第1号と異なり海外に住所があっても、老齢厚生年の老齢給付等を受けることができても、第3号被保険者になることがあります。
被保険者の種類で資格喪失が違うのも分かりにくくしています。
老齢厚生年金の受給資格は
老齢基礎年金の資格期間は25年から10年に短縮されますが、老齢厚生年金の方はどうなるのでしょうか。
老齢厚生年金は、引き続き65歳から支給されますが、老齢厚生年金を受け取るには以下のすべての要件を満たしている必要があります。
1.65歳以上であること
2.1月以上の厚生年金保険の被保険者期間があること
3.老齢基礎年院の受給資格期間を満たしていること
つまり、老齢基礎年金の受給資格があれば、老齢厚生年金の期間が1月でもその期間に応じて支払われるということになります。
8月1日から年金の資格期間が短縮です
老齢年金を受けるために必要な受給資格期間は今まで原則25年必要でしたが、8月1日から10年間に短縮されます。
ただし、受給資格を取得したからといっても、年金は加入していた期間によって年金額が決まるので、年金だけでは生活できない可能性が引き続きあります。
例えば、国民年金であれば、20歳から60歳の40年間1号被保険者として支払い続けたとしても年間で約78万円です。
10年間支払ったとすれば、その4分の1ですから、国民年金の受け取れる額も4分の1の年間19万5千円程度ということです。
月に換算したら16,250円にしかなりません。
支払った保険料が掛け捨てになっていたのは問題とされてきたので、受給資格期間が短縮されたのはいいことだと思います。
将来、年金制度は崩壊して年金を受け取れなくなるといった解釈を理由に、社会保険料を納付しない人がいます。
では、その人が貯蓄しているか聞いてみるとほとんどの人は貯蓄も老後対策も行っていなかったりします。
公的年金制度が将来にわたって絶対に維持できると保障できるわけではありませんが、その可能性は高いです。
特に国民年金は、国庫負担があるので、保険料負担に比べて受け取れる金額はお得といえます。
現状は、保険料を払っておいた方が有利です。
国民年金のみの保険料と年金給付を比較してみると分かります。
国民年金保険料は現在16,340円です。20歳から60歳まで未納なく支払ったとすれば40年で合計7,843,200円を保険料として支払ったことになります。
対して受け取れる老齢基礎年金は満額約78万円です。約10年で支払った保険料を取り戻せることになります。
老齢年金は、生きてる限り受給できるので、人生100年時代においては将来年金として受け取れるように保険料を払っておいた方が得です。
今後、支給開始年齢が引き上げられる可能性はありますが、現段階では有利です。
また、公的年金には、老齢だけでなく、障害年金と遺族年金もあることを考えれば、未納期間は少なくしておいた方がいいと思います。