健康保険法は、社会保険の中でも古く、大正11年に制定され、昭和2年から施行されています。
健康保険法も、他の法律と同じく時代に合わせるようにして法改正がされてきました。
日本は、国民皆保険を採っているので、日本に住む人であれば、原則としていずれかの医療保険制度に加入します。
医療保険の中でも中心的な役割をもつのが健康保険です。
どんな時に健康保険法の対象になるか(健康保険の目的)
健康保険では、被保険者とその家族の病気・ケガ・死亡・出産に関して保険の給付を行います。
また、労働者または被扶養者の業務災害に関しては、労働者災害補償保険(通称労災)の対象になるので、健康保険の対象にはなりません。
健康保険法第一条
この法律は、労働者又はその被扶養者の業務災害以外の疾病、負傷若しくは死亡又は出産に関して保険給付を行い、もって国民の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
健康保険の対象になるのは、民間企業(適用事業所)に使用されるに至ったときからです。
使用される前に起きた病気やケガでも、被保険者の資格を取得した後は健康保険の対象になります。
健康保険法の厚生労働大臣の権限に係る事務については、ほとんどを日本年金機構が行っています。
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2つの保険者
健康保険法第4条
健康保険(日雇特例被保険者の保険を除く。)の保険者は、全国健康保険協会及び健康保険組合とする。
保険者とは、健康保険事業の経営を行っている団体のことです。
健康保険の保険者には、全国健康保険協会と健康保険組合の2つがあります。
健康保険組合というのは、健康保険が適用される事業主と従業員で組織する法人をいいます。
一定数以上の被保険者が必要なので、健康保険組合のイメージとしては大手企業といったところです。
健康保険組合は、組合員である被保険者の保険を管掌(監督して扱うこと)します。
これに対して、全国健康保険協会では、健康保険組合の組合員以外の被保険者の保険を管掌します。
労働者の中には、複数の事業所で働く人がいます。
同時に2つ以上の事業所に使用される被保険者については、その被保険者が1つの保険者を選択する(10日以内に届出)ことになります。
全国健康保険協会
政府が行っていた健康保険事業は、平成20年10月から全国健康保険協会が管掌しています。
ただし、被保険者の資格の取得及び喪失の確認、標準報酬月額及び標準賞与額の決定並びに保険料の徴収(任意継続被保険者に係るものを除く)並びにこれらに附帯する業務については、厚生労働大臣が行うこととされています。
全国健康保険協会は、東京都に本部がある法人組織であって、支部は各都道府県に設置されています。
健康保険組合
健康保険組合は、適用事業所の事業主及びその事業所に使用される一般被保険者と任意継続被保険者で組織される法人です。
常時700人以上の一般被保険者がいる適用事業所は、単独で健康保険組合を設立することができます。
その際は、適用事業所に使用される一般被保険者の2分の1以上の同意を得て規約を作り、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。
また、一般被保険者が計3,000人以上いる場合は、共同して健康保険組合を設立できます。
健康保険組合には、次のいずれかの場合に解散があります。
1.組合会議員の定数の4分の3以上の多数による組合会の議決があったとき
2.健康保険組合の事業が継続不能になったとき
3.厚生労働大臣の解散命令があったとき
解散によって消滅した場合は、健康保険組合の被保険者だった者は、全国健康保険協会の被保険者になります。
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保険医療機関等
保険医療機関等とは、厚生労働大臣の指定を受けた病院・診療所・薬局です。
健康保険の保険給付を受けるには、保険医療機関等であることが必要です。
全国健康保険協会および健康保険組合にかかわらず、健康保険の被保険者なら保健理療機関等で診療が受けれます。
保険医療機関において健康保険の診療に従事できるのは、厚生労働大臣の登録を受けた医師・歯科医師または保険薬局の薬剤師です。
指定訪問看護事業所
健康保険の給付である訪問看護療養費、家族訪問看護療養費等は、厚生労働大臣の指定した訪問看護事業者が開設する訪問看護ステーションにより行われる訪問看護である場合に対象となります。
疾病又は負傷により、居宅において継続して療養を受ける状態にある者(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る)に対し、その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者が行う療養上の世話又は必要な診療の補助を行う事業を訪問看護事業といいます。
そして、厚生労働大臣が指定する訪問看護事業を指定訪問看護事業者といいます。