老後の生活の柱となるのは国の年金制度ですが、国の年金制度なのにかなり複雑です。
複雑ではありますが、少しずつでも知っていくことが不安の解消につながります。
老後に対する不安を抱える人は多いですが、不安の一番の原因は無知からくるからです。
日本の年金制度では、国民皆年金といって原則としてすべての国民が年金制度の対象者になります。
若者の中には、年金制度はあてにならないからと社会保険料を未納にする人がいますが、社会保険は自分の意思で任意に加入できるものではありません。
また、年金は老後だけのものではなく、障害年金や遺族年金もあるので未納は避けた方が賢明です。保険料が負担なら免除制度を検討しましょう。
日本の年金制度は、国民年金制度と厚生年金制度が原則で、さらに企業年金や確定拠出年金といった上乗せ年金制度もあります。
日本の年金制度は2階建て
日本の年金制度は2階建てといわれます。
まず、すべての国民は何らかの年金制度に加入しますが、すべての国民が加入するのが国民年金といわれる年金です。
自営業者、会社員、公務員、フリーター、無職……関係なく被保険者となり、その人が要件(老後、障害、死亡など)を満たせば年金として支給されます。
国民年金が基礎年金ともいわれているのは、みんなが加入するからです。
これが年金制度の1階部分にあたる国民年金です。
次に年金制度の2階部分にあたるのが厚生年金です。
厚生年金は、会社員や公務員といった企業などに雇用されている人々が加入の対象になります。
このように厚生年金保険はサラリーマンやOLさんを対象とした年金制度で、基礎年金の上乗せ給付を行うことを目的としているので、年金制度の2階部分と言われています。
厚生年金の被保険者
国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人は原則として加入します。
自営業者や無職の人は自分で保険料を支払い、会社員やその専業主婦(3号)などは厚生年金経由で保険料を負担しています。
厚生年金の場合は、日本国内にするすべての人が対象ではなく、被保険者の要件を満たす必要があります。
また、勤め先が適用事業所か否かといったことも重要になります。
適用事業所
厚生年金が強制的に適用される強制適用事業所と、任意に認められる任意適用事業所とがあります。
いずれかであれば厚生年金が適用される事業所です。
強制適用事業所
適用事業所となるのは以下の事業所に該当するものをいいます。
- 国、地方公共団体又は法人の事業所であって、常時従業員を使用するもの
- 常時5人以上の従業員を使用する個人経営の適用業種(サービス業、法務業、宗教、農林水産業等以外のもの)の事業所
- 船員法1条に規定する船員として、船舶所有者に使用される船舶
上に該当する事業所を強制適用事業所といいます。
任意適用事業所
強制適用事業所に該当しない場合でも、厚生労働大臣の認可を受けることによって、適用事業所とすることもできます。
また、強制適用事業所が法人から個人にしたり、人数の変更によって強制適用事業所に該当しなくなった場合は、該当しなくなった日に任意適用の認可があったものとみなして保険を継続して適用することになっています。
厚生年金の被保険者の種類
厚生年金の被保険者には、当然に被保険者とされる「当然被保険者」、任意単独被保険者、高齢任意加入被保険者、第4種被保険者、の以上4つがあります。
当然被保険者
適用事業所に使用される70歳未満の人は当然被保険者になります。
ただ、65歳以上の厚生年金保険の被保険者であって、老齢基礎年金等の老齢又は退職を支給事由とする年金の受給権を有する人は、国民年金の第2号被保険者となりません。
また、適用事業所に使用されていても、次の人は被保険者から除外されることになります。
- 国、地方公共団体又は法人に使用されるもので、一定の者
- 日々雇い入れられるもの、2月以内の期間を定めて使用される者
- 所在地が一定しない事業所で使用される者
- 季節的業務に使用される一定の者
- 臨時的事業の事業所に使用される一定の者
任意単独被保険者
適用事業所でない事業所に勤務する70歳未満の人は任意で被保険者となれます。
ただし、被保険者となるためには事業主の同意と厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。
高齢任意加入被保険者
70歳に達しても老齢基礎年金、老齢厚生年金等の受給権を有しない場合は、70歳以後に厚生年金保険に加入することで受給権を取得できる場合があります。
適用事業所に使用される70歳以上の人は、厚生労働大臣に申し出をすることで高齢任意加入被保険者になることができ、適用事業所以外の事業所に使用される70歳以上の人は、事業主の同意と厚生労働大臣の認可を得ることによって高齢任意加入被保険者になることができます。
第4種被保険者
厚生年金の大改正が昭和60年に行われましたが、その際に廃止されたのが第4種被保険者です。一定の要件に該当する人のために経過的に設けられている被保険者ですので、該当する人は限られます。
旧厚生年金保険法では、被保険者期間が10年以上あって、一定の要件を満たす者は厚生労働大臣に申し出ることにより、第4種被保険者となることができます。
昭和16年4月1日以前に生まれで厚生年金保険法の被保険者、施行日の前日までに第4種被保険者であった人等といった要件です。
老後に年金を受けるためには
老後になって年金を受けるには、まずは国民年金の受給資格である10年以上の被保険者期間が必要です。
厚生年金の年金を受けるには、さらに厚生年金の加入期間が1年以上必要です。
たとえ厚生年金の加入期間が5年あったとしても、国民年金の受給資格を満たさなければだめなので、まずは国民年金の受給資格を満たすことです。
年金制度は特例が多いのでとても複雑ですが、まずは基本となることから確認することです。