少子高齢社会では、育児や介護をしている人に対しても就業する機会を可能にできるかが問われています。
今までは、正社員になるにはフルタイムで働けるかどうかが問われていました。
これから労働力人口(15~64歳)が減少していくことが見込まれる日本では、時間に縛られることなく、能力や意欲、意識の高い人材が活躍できる社会が必要です。
少子化、高齢化、労働力の減少、ブラック企業といった問題に対して、注目を集めているのが「短時間正社員制度」です。
短時間正社員とは
仕事に対する意識やライフスタイルが多様化している現在では、自分のやりたい働き方を優先する人も増えています。
また、医療の技術の発展によって長生きが当たり前となり、介護や育児と両立ができる働き方を希望する人も増えています。
今までは、正社員になるためには、フルタイムで働くしかありませんでした。
短時間正社員制度は、フルタイムで働く正社員よりも短い労働時間であっても正社員として働くことを認める制度です。
具体的には、次のいずれにも該当する社員を短時間正社員といいます。
1.期間の定めのない労働契約で約している。
2.時間当たりの基本給・賞与・退職金等が、フルタイムで働く正社員と同水準であること。
短時間正社員制度を導入するメリット
短時間正社員制度を導入するメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
①時間当たりの生産性の向上
短時間の労働によりメリハリがつきます。また、業務の効率化や改善が期待できます。
業務の効率化によって長時間労働の解消が期待できます。
②少子高齢社会への対応
短時間でも正社員になれることから、キャリアの形成が図れるようになり、安心して子供を育てられるようになります。
フルタイムでなくても働けることは、高齢者でも働きやすくなります。
③労働力人口が減少しても人材が確保しやすい
短時間正社員制度の導入により、育児や介護との両立がしやすくなります。
正社員への登用によって人材が定着します。
④労働者の仕事と生活の調和が可能となる
空いた時間を趣味に使ったり、キャリア形成のために使ったりでき、仕事と生活の調和が図れます。
⑤助成金の対象となるかも
要件を満たせば、キャリアアップ助成金の短時間正社員コースの対象となります。
短時間正社員制度の導入に向けての手順
企業における短時間正社員制度の導入に向けた手順についての参考サイトは、「厚生労働省 短時間正社員制度導入支援ナビ https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/」です。
①短時間正社員の期待する役割の明確化
短時間正社員制度の導入にあたり、短時間正社員に期待する役割を検討して明確化します。
どのような職務内容を設定するか、適用期間、労働時間を検討して明確化します。
②短時間正社員の労働条件を決める
短時間正社員の労働条件を検討して決めます。
人事評価
質的な評価をフルタイム正社員と同じにするため、量的な部分だけを短時間正社員の労働時間に合わせて変更します。
賃金
基本給は、フルタイム正社員の水準を踏まえたうえ、労働時間あたりに変化させます。
賞与は、フルタイム正社員と同じ水準にします。支給ベースが基本給の場合は基本給に合わせて減額します。
手当などは、個別に判断します。労働日数が基準になっているような手当は、労働日数に応じて減額することができます。
退職金は、勤続年数を考慮して短時間制度期間中の勤続年数を考慮します。
教育訓練
同じ職種・職位のフルタイム正社員がいる場合は、同等の機会を与えるようにします。
③将来フルタイム正社員に復帰・転換できるように検討する
育児・介護が目的で短時間正社員制度を利用している社員は、将来フルタイム正社員への転換を希望するかもしれないので検討します。
同様に育児・介護のために制度を利用している短時間正社員は、後日フルタイム正社員に復帰することを希望する可能性があるので、フルタイム正社員への復帰を検討します。
④短時間正社員制度を導入し、周知する
周知する内容は、制度導入の目的、制度内容、制度利用の際の事務手続き、制度のメリットデメリット、働き方の効率化等を知ってもらいます。
短時間制度を導入するため、就業規則の変更も行います。
また、制度を知ってもらうために、パンフレットやマニュアルを作成して周知させます。
参考
厚生労働省 短時間正社員制度導入支援ナビ https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/navi/