派遣先にも、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が適用されますということはご存知ですか。
労働者派遣法に少し詳しい人だと、派遣労働者と雇用関係にあるのは派遣元なので意外と思うかもしれません。
実際の労働では、業務に関して指揮しているのは派遣先ですし、セクハラや出産の対策や不利益な取り扱いについては、派遣元だけでなく派遣先も連携して対応していくことが必要です。
男女雇用機会均等法とは
男女雇用機会均等法は、憲法で保障している法の下の平等の実現のために、性別に関係なく雇用についてチャンスと待遇確保が与えられるためにある法律です。
また、女性労働者が働く際に、妊娠中及び出産後の健康確保を図る目的もあります。
なので、男女雇用機会均等法では、求人募集や採用で性別による差別を禁止したり、性別によった出世や転勤なども禁止しています。
当然、性別が原因の待遇も禁止ですし、妊娠を上司に告げたら退職を勧められるといったことも禁止されています。
少し前だと、雇用形態や職種内容、定年の年齢が、性別が理由で違うといったことがありましたが、性別による差別なので違法となります。
とにかく、性別が理由で労働者の採用や待遇を変えてはいけないということです。
ただし、男性ばかりいる職場について、職場の男女差を解消するため、女性労働者を積極的に登用する場合などは認められることがあります。
これは「ポジティブ・アクション」といわれ、認められています。
育児・介護休業法とは
育児・介護休業法とは、育児休業・介護休業並びに子の看護休暇及び介護休暇の制度を設けて、労働者の雇用の継続と再就職の促進を図り、職業生活と家庭生活との両立をさせようという法律です。
1歳未満の子を養育する労働者は、会社に申し出れば育児休業をすることができます。
要介護状態にある家族を介護する労働者は、会社に申し出れば介護休業をすることができます。
小学校就学前の子を養育する労働者は、会社に申し出ることで、1年間に5労働日まで休めます。小学校就学前の子が2人以上いる場合は10労働日までになります。
要介護状態にある家族の介護をする労働者は、会社に申し出て1年間に5労働日、2人以上要介護状態の家族がいる場合は10労働日までの介護休暇を取得できます。
他にも所定外労働の制限や深夜業、時間外労働が制限される規定も定められています。
派遣先に適用されることになった点
派遣先にも、男女雇用機会均等法と育児・介護休業法が適用されることになりましたが、具体的に何が適用されるようになったのかは、以下の点です。
・妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いの禁止
・育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取り扱いの禁止
・セクシャルハラスメント(以下セクハラ)対策
・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策
・妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
また、労働者や派遣先が講ずべき措置に関する指針により、派遣先が労働者派遣契約の締結に際し、派遣労働者の性別を特定する行為は禁止です。
妊娠・出産等を理由とする不利益取り扱いとは
派遣先が、派遣労働者の妊娠・出産等の厚生労働省令で定められている事由を理由とする不利益な取り扱いをすることは禁止です。
厚生労働省令で定められている事由については、以下のようなものがあります。
・妊娠
・出産
・産前休業を請求・実行したこと、産後休業をしたこと
・妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置を求め、又は当該措置を受けたこと
・軽易な業務への転換要求をしたこと及び実際に転換したこと
・育児時間の請求をした又は育児時間を取得したこと
などがあります。
不利益な取り扱いとは、妊娠した派遣労働者が、派遣契約に定められた労働提供ができるのにもかかわらず、派遣先が派遣元に対し、派遣労働者の交替を求めたり、受け入れなかったりしない場合が該当します。
他には、派遣労働者の就業環境を害したり、解雇、契約の更新をしない、降格させる、減給をする、評価を引き下げるといったことがあたります。
育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取り扱いの禁止
派遣先には、派遣労働者への育児休業等の申出・取得等を理由とする不利益取り扱いの禁止が義務付けられます。
育児・介護休業法で認められている育児休業、介護休業、この看護休暇、介護休暇などの申出・取得等をした場合に、休業までは派遣契約に基づく役務(サービス)の提供が出来るのにもかかわらず、育児・介護休業などの取得したことを理由に不利益な扱いをすることは禁止されています。
不利益な扱いには、派遣労働者に対して役務の提供を拒んだり、派遣先が派遣労働者の交替を求めたり、解雇したり、就業環境を害したり、契約の更新をしない、といったことなどが挙げられます。
セクシャルハラスメント対策及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
派遣先は、派遣労働者に対しても職場におけるセクシャルハラスメント(以下セクハラ)対策及び妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント対策として、雇用管理及び指揮命令上必要な措置を行わなければなりません(セクハラ指針)。
セクハラは、被害者の性的な価値観にかかわらず、性的な言動であれば該当します。
(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
(2)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制整備
(3)事後の迅速かつ適切な対応
(4)相談者・行為者のプライバシー保護、相談者等に対する不利益な扱いをしないこと、労働者に周知・啓発すること
妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置
派遣先は、自ら雇用する労働者と同様、派遣労働者についても妊娠中及び出産後の健康管理に関する必要な措置を講じなければなりません。
(1)妊産婦が保健指導又は健康診査を受けるために必要な時間の確保
(2)妊産婦が保健指導又は健康診査に基づく主治医等の指導事項を守ることができるようにするために講じなければならない措置(時差通勤、休憩回数の増加、勤務時間の短縮、休業等)