社会保険の年金給付は、原則として「一人一年金の原則」を採っています。
一人一年金の原則は、同一の支給事由に基づく国民基礎年金と厚生年金の併給のみ認めており、それ以外の併給は認められていません。
国民年金の年金給付は、受給権者が他の国民年金を受けることができるときは、その支給が停止されます。
2つ以上の年金の受給権が発生したときは、いずれかの年金を選択して受けることになり、選択しなかった他の年金は支給が停止されます。
一人一年金の原則
社会保険の年金給付は、原則として同一の支給事由に基づく国民基礎年金と厚生年金の併給のみを認め、それ以外の併給を認めていませんが、この原則を「一人一年金の原則」といいます。
この一人一年金の原則があるので、複数の受給権を有している場合は、年金受給選択申出書を提出していずれか一つを選択し、もう一方の年金は支給が停止されます。
年金の支給が停止されたからといって、年金の受給権自体がなくなるわけではありません。
選択した年金は、将来に向かって撤回することができ、いつでも別の年金に選択替えすることができます。
国民年金の給付には、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金といった基礎年金の他、付加年金、寡婦年金、死亡一時金といったものがあります。
国民年金の年金給付で併給が認められているのは、老齢基礎年金と付加年金のみであって、それ以外の組合せで併給されることはありません。
同一の支給事由により併給される場合
同一の支給事由により支給される国民基礎年金と厚生年金給付は併給されます。
・老齢基礎年金と老齢厚生年金
・障害基礎年金と障害厚生年金
・遺族基礎年金と遺族厚生年金
遺族基礎年金の受給権者に、別の人の死亡によってさらに遺族厚生年金の受給権が発生した場合は、同一の支給事由に基づかないので、どちらか一方しか受給できません。
障害の場合は、同一でない事由であっても障害が併合されることがありますが、これは「併合認定の原則」といって併給とは異なります。
同一の支給事由でないが併給される場合
同一の支給事由でない場合でも、併給されるケースがいくつかありますが、これらは一人一年金の原則の例外となります。
受給権者が65歳以上である場合には、国民年金の「老齢基礎年金」と厚生年金の「遺族厚生年金」については併給されます。
老齢厚生年金の受給権を有する65歳以上の遺族厚生年金の受給権者は、老齢厚生年金が全額支給され、老齢厚生年金として支給された分が遺族厚生年金から控除されます。
老齢厚生年金と遺族厚生年金の詳しい説明については、厚生年金でまとめています。
また、65歳以上の人に支給される国民年金の「障害基礎年金」についても、厚生年金の「老齢厚生年金」または「遺族厚生年金」と併給されます。
これは障害者の就労を評価し、障害者の自立を促進するといった理由から認められています。
障害基礎年金と老齢厚生年金が併給されている場合に、障害基礎年金の子の加算が行われているときは、老齢厚生年金の子を対象とする加給年金額相当額が支給停止されます。
また、障害基礎年金と遺族厚生年金が支給されている場合は、遺族厚生年金の経過的寡婦加算が支給停止されます。
同一の支給事由でないが併給されるケース
・65歳以上の者に支給される老齢基礎年金と遺族厚生年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金・遺族厚生年金)
・65歳以上の者に支給される障害基礎年金と老齢厚生年金
・65歳以上の者に支給される障害基礎年金と遺族厚生年金
一人一年金の原則と併給調整のまとめ
・社会保険の年金給付は、原則として同一の支給事由に基づく基礎年金と厚生年金以外の併給を認めません(一人一年金の原則)。
併給される場合についてまとめました。
同一の支給事由によって併給されるケース
・老齢基礎年金と老齢厚生年金
・障害基礎年金と障害厚生年金
・遺族基礎年金と遺族厚生年金
一人一年金の原則の例外
・65歳以上の老齢基礎年金と遺族厚生年金
・65歳以上の障害基礎年金と老齢厚生年金
・65歳以上の障害基礎年金と遺族厚生年金