介護保険制度は、40歳以上の人が第2号被保険者となって保険料を納め、介護が必要な人は費用の一部を負担すれば介護サービスが受けられます。
介護保険法では、要介護状態であれば介護給付を受けられます。
また、要支援認定を受けた場合は、予防給付を受けられます。
どちらについてもそれぞれ、市町村の認定が必要です。
介護保険は、原則1割負担でサービスを受けられます。
介護保険の財源については、被保険者と公費で賄っています。
要介護状態と要支援状態
介護保険の給付を受けるは、介護状態(要支援状態)に該当すること及び市町村の認定が必要です。
要介護状態は、要介護1~要介護5まで、要支援状態は要支援1と要支援2があります。
要介護状態
介護保険の要介護状態とは、身体上または精神上の障害により、入浴、排せつ、食事といった日常生活における基本動作について、原則6か月間にわたり継続して常時介護を要すると見込まれる状態であって、要介護状態区分のいずれかに該当することをいいます。
介護保険法7条1項
この法律において「要介護状態」とは、身体上又は精神上の障害があるために、入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部又は一部について、厚生労働省令で定める期間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態であって、その介護の必要の程度に応じて厚生労働省令で定める区分(以下「要介護状態区分」という。)のいずれかに該当するもの(要支援状態に該当するものを除く。)をいう。
特定疾病
要介護状態の原因となる疾病は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病(特定疾病)によって生じるといわれ、65歳以上で多く発生していますが、40歳以上65歳未満であっても特定疾病に該当する場合は、要介護者になります。
つまり、40歳以上65歳未満であっても、特定疾病によるものであれば、介護保険の対象となるということです。
特定疾病の範囲
- がん(医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る。)
- 関節リウマチ
- 筋萎縮性側索硬化症
- 後縦靱帯骨化症
- 骨折を伴う骨粗鬆症
- 初老期における認知症
- 進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症及びパーキンソン病
- 脊髄小脳変性症
- 脊柱管狭窄症
- 早老症
- 多系統萎縮症
- 糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症
- 脳血管疾患
- 閉塞性動脈硬化症
- 慢性閉塞性肺疾患
- 両側の膝関節又は股関節に著しい変形を伴う変形性関節症
要支援状態
要支援状態は、要介護状態にならないように予防が必要な状態であって、要支援状態区分に該当する場合です。
介護保険法第7条2項
要支援状態とは、身体上もしくは精神上の障害があるために入浴、排せつ、食事等の日常生活における基本的な動作の全部若しくは一部について、原則として6か月間にわたり継続して常時介護を要する状態の軽減若しくは悪化の防止に特に資する支援を要すると見込まれ、又は身体上若しくは精神上の障害があるために6月間にわたり継続して日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態であって、支援の必要の程度に応じて定める要支援状態区分のいずれかに該当するものをいう。
要介護認定または要支援認定
要介護認定または要支援認定を希望する被保険者は、市町村に申請が必要です。
要介護認定または要支援認定を受けた市町村は、当該申請について被保険者の心身の状況を調査し、医師等の意見を聞いたうえで、介護認定審査会に通知します。
介護認定審査会は、審査及び判定を行い、市町村に結果を通知します。
介護認定審査会から通知を受けた市町村は、結果を被保険者に通知します。
介護保険第1号被保険者の保険料
介護保険の第1号被保険者からは、市町村が保険料を徴収します。
保険料は、所得状況に応じて異なります。
また、市町村は所得の区分を独自に設定することができるので、市町村によっても保険料は違います。
第1号被保険者の保険料の納付方法には、普通徴収と特別徴収の2種類があります。
普通徴収
普通徴収は、特別徴収されない被保険者に行われます。
公的年金額が18万円未満であったり、公的年金を受給していない人は、納付書によって保険料を納付します。
特別徴収
公的年金の総額が18万円以上の被保険者については、他の医療保険の保険料と合算した額が公的年金から自動で徴収されます。
ただし、保険料額が当該年金給付額の2分の1を超える場合は行われません。
介護保険第2号被保険者の保険料
40歳以上65歳未満の健康保険の加入者は、介護保険の第2号被保険者となります。
介護保険の第2号被保険者となった場合は、健康保険の保険料と合わせて介護保険料が徴収されます。
事業主に対する保険料の納入告知も一般保険料と一緒に行われます。
健康保険、厚生年金保険、介護保険の保険料は、事業主と被保険者で折半します。国保の場合は国と折半します。
協会けんぽの被保険者の被扶養者は、被保険者全体で負担することになっているので、被扶養者が保険料を納めることはありません。
ただ、健康保険組合によっては、被扶養者に対する介護保険料を徴収する場合があります。
第2号被保険者から徴収された介護保険料は、社会保険診療報酬支払基金が、各医療保険者から介護給付費、地域支援事業支援納付金として徴収し、今度は介護給付費交付金、地域支援事業支援交付金として市町村に交付します。
介護費用の負担
要支援・要介護認定を受けた人は、介護保険サービスを原則として1割負担で利用できます。
ただし、一定以上の所得がある人は、自己負担割合が2割または3割となることがあります。
介護給付費の財源
介護保険の給付に要した費用の負担(介護費用-自己負担)は、公費で50%、被保険者の保険料で50%となるよう設定されています。
公費については、国が25%(5%は調整交付金)、都道府県と市町村がそれぞれ12.5%を負担しています。
被保険者の保険料については、第1号被保険者が約22%、残りの28%が介護給付費交付金(第2号被保険者の保険料)として市町村に交付されています。
第1号被保険者の保険料と第2号被保険者の保険料負担割合は、人口比率に基づいているといわれています。
介護保険の財源負担の割合
国 | 25%(5%調整交付金) |
都道府県 | 12.5% |
市町村 | 12.5% |
第1号被保険者の保険料 | 約22% |
第2号被保険者の保険料(介護給付費交付金) | 約28% |
また、介護保険では、財政について中期的財政方式が採用されており、おおむね3年を通じて財政の均衡が保たれるように保険料率が設定されます。