「法定相続情報証明制度」が開始されたということで、法務局に行くたびにポスターを見かけます。
この制度が始まる前は、相続が発生すると戸除籍謄本等の束を持って、相続手続きのために何度も役所を行き来する必要がありました。
しかし、この制度を利用することで、相続関係の一覧図を提出するだけで、戸除籍謄本等の束を持って役所を何度も行き来する必要がなくなります。
なぜ、この制度を取り上げたかというと、この制度の代理人となれる対象に8士業(弁護士、行政書士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士、司法書士、土地家屋調査士)が入っているからです。
8士業に社会保険労務士(以下社労士)が入っていることから調べました。
法定相続情報証明制度
2017年5月29日から、法務局で相続手続きの「法定相続情報証明制度」が始まりました。
この制度を利用すると今までのように金融機関に行くたびに、戸籍書類一式を提出する必要がなくなります。
制度が開始された背景には、不動産を相続した場合に登記をしないケースが見られたことと関係しています。
住宅ローンを利用して不動産を購入した場合は必ず登記が行われますが、相続した場合は登記が必ずしも行われていなかったため、日本各地で所有者不明の不動産だらけになりました。
所有者不明の不動産は、九州と同じくらいの規模といわれ、社会問題化しています。
法定相続情報証明制度では、相続人が登記所に必要書類を持参し、登記官によって法定相続一覧図の認証されれば、認証文が付いた法定相続一覧図の写しが交付されます。
この認証文付き法定相続一覧図が、今まで必要だった大量の書類の代わりになります。
法定相続情報一覧図の写しは,相続手続に必要な枚数を発行してもらえます。
法定相続情報一覧図は、5年間保管され、期間内であれば申出人の希望により一覧図の再交付も可能です。
申出ができる人
この制度の申出ができるのは、相続人です。
この制度の代理人になれるのは、法定代理人と民法上の親族、それと一定の専門家です。
専門家には、弁護士,司法書士,土地家屋調査士,税理士,社会保険労務士,弁理士,海事代理士及び行政書士に限られます。
申出ができる登記所は、次の地を管轄する登記所のいずれかです。
① 被相続人の本籍地
② 被相続人の最後の住所地
③ 申出人の住所地
④ 被相続人名義の不動産の所在地
郵送での申出も可能です。
この制度は郵送を除いて無料で利用できます。
法定相続情報証明制度の手続き
この制度を利用するためには、申出書に書くとともに必要書類が必要です。
必ず用意する書類は、以下の書類です。
・亡くなられた人の戸除籍謄本
・亡くなられた人の住民票の除票
・相続人全員の戸籍謄本または抄本
・相続人の代表者の氏名、住所を確認できる公的な書類(運転免許のコピー、住民票)
作成した法定相続情報一覧図と必要書類をセットにして法務局に申出ます。
相続の未登記が問題となっていますが、未登記対策の一手になればいいと思います。
不動産を相続したら登記を
不動産の登記名義人である所有者が死亡した場合は、所有権移転の登記が必要です。
不動産を相続しても、登記しないまま放置されるケースが多く、様々な社会問題を引き起こしている可能性があります。
法定相続情報一覧図の写しは、不動産がなくても利用でき、不動産の相続登記にも利用することができます。
日本にある未登記不動産は、九州と同じ大きさの規模あるといわれ、政府もこの問題を放置しておくことは出来ず、対策に乗り出しています。
登記を行うことで、第三者から権利を守ることにもなり、トラブル防止にもつながります。
おわりに
代理できる資格者に社労士が入っていますが、社労士でこの制度を知っている人は1割もいないでしょうから、社労士がこの制度の代理人として依頼されることは考えにくいと思います。