2012年に行政書士が、情報屋と組んで戸籍や住民票を不正に取得していたとして逮捕されました。
以前は、会社が人を採用する際や結婚する際に、あらかじめ探偵社に依頼して身辺調査を行うといったことが普通に行われていました。
その後、身辺調査は、プライバシーの侵害にあたるということから、また、差別の助長につながるといった理由で、一般的な会社では行われなくなりました。
ただ、結婚相手に対して身辺調査を行っても問題ないと思っている人は意外と多く、結婚の際に相手の調査を行うことは当然と考えている人もいるようです。
戸籍の不正取得事件とは
2011年11月に、愛知県警幹部の戸籍が不正に取得されるという事件が起こり、この事件がきっかけとなって明らかになったのが情報屋の存在でした。
この情報屋は、行政書士らと組んで住民票や戸籍などを不正に取得したとして2012年に逮捕されました。
逮捕された行政書士は、7年半で2万件以上の戸籍情報を取得し、転売して不正に利益を得ていました。
売り上げにしてなんと1億5千万円以上にも上っていたそうです。
行政書士から買い取った戸籍情報は、情報屋が買い取り、全国の探偵業者に転売されていました。
行政書士に1件当たり8千円~1万円で依頼し、探偵業者に2万3千円で販売していたそうです。
戸籍や住民票の不正取得の目的は、大半が結婚相手の身元調査だったとされています。
ところが目的を見てみるとそう単純なものではなかったようです。
人権に関するアンケート調査の「結婚にあたってどのようなことが気になるか」というアンケートに対して、国籍、障害、宗教、同和地区かどうかを気にすると答えた人がいます。
同和地区出身か否かについて「気にする」と答えた人は、東京では10%だったのに対し、同和地区の多い大阪では21%にも達していたそうです。
士業の職務上請求
士業の中でも、弁護士、司法書士、行政書士、社会保険労務士、税理士、弁理士、土地家屋調査士、海事代理士といった8士業には、業務に必要となる範囲内で、顧客の戸籍、住民票を取得することが認められています。
本来であれば、顧客の戸籍や住民票を取得する際は、委任状が必要です。しかし、職務上請求は顧客の委任状がなくても戸籍や住民票を取得できます
8士業には、職務上請求書という用紙がそれぞれあります。
この職務上請求書を使って顧客の住民票や戸籍を取得するのですが、この職務上請求について支部会や研修会で扱いについてうるさく言われます。
理由としては、職務上請求の不正使用がたびたび起こっていいて、刑事事件にまで発展しているケースもあるからです。
今も残る同和問題
外国人、在日、LGBT、同和(部落)出身者と、差別にも様々あります。
差別は、結婚や就職のときだけ問題になるのではなく、日常生活の様々な場面で起きています。
学区に同和地区がある学校では、学校に差別的なチラシが配られたという事件がありました。
部落出身ということがばれたら友人や恋人が逃げていくのではないかと悩む人もいます。
不動産業界でも土地差別について過去に問題になりました。
比較的若い世代だと部落について学校で取り上げるということはあまり多くはありませんから、差別と気付かずに部落かどうか役所に問い合わせてしまうことがあります。
不動産協会では、被差別部落の所在について答えないように注意喚起をしています。
宗教でも被差別部落に対する差別がありました。
いわゆる「差別戒名」と「差別名字」です。
差別戒名というのは、部落の住民の戒名に畜(ちくしょう)、賤(いやしい)、卑(いやしい)、皮(えた)、革(えた)、卜(げぼく)、旃陀羅(せんだら・インドの被差別民)といった普通の人の戒名には付けないような文字を用いていたというものです。
差別名字というのは、被差別部落の人と分かるような名前を僧侶がつけたというものです。
その結果、解放令の後も名字で被差別部落出身かバレてしまうケースがたびたびあったそうです。
現在では、宗派が過去の過ちとして認め、差別戒名に対して追善法要によって改名が行われています。
差別につながる調査
戸籍情報不正取得事件は、国会でも取り上げられ大きな問題となりました。
興信所や探偵会社でも差別につながる調査は受けないといった動きがあります。
個人の情報を本人の知らないところで調べることは、プライバシーの侵害になります。
職務上請求は、使い方によってはプライバシーの侵害になり得るので、業務に必要な範囲でのみ認められています。
別に職務上請求はやめなさいというわけではなく、使い方を間違えないようにすることが重要です。