高額療養費制度があるので、その月の医療費が著しく高額になったとしても、その月の医療費を一定額まで抑えることができます。
その月の療養費が著しく高額な場合は、一部負担金として支払った額のうち上限を超える部分について支給されます。
医療機関の受診時に、国民健康保険限度額適用認定証も提示することで、窓口での負担を自己負担限度額までにすることもできます。
高額療養費とは
高額療養費制度は、被保険者の療養に要した費用が著しく高額にならないように、月ごとに上限を設定する制度です。
被保険者が、同一の月に療養の給付または療養費、訪問看護療養費等などの支給を受けたときに支払った自己負担額が著しく高額であるときは、被保険者に対して高額療養費が支給される。
高額療養費は、同一の月内ごとに計算するので、例えば8月15日から9月15日まで同一の病院で療養を受けたら、8月15日から8月31日までと、9月1日から9月15日までとを別々に計算します。
高額療養費では、被保険者の所得区分から自己負担限度額を求めていきます。
所得が多い人は負担額が大きくなり、所得が低い人は負担が小さくなるということです。
食養や生活養は療養に関係なく普段の生活でも発生するように、食費や生活費に要した費用(食事療養標準負担額・生活療養標準負担額)については、高額療養費の対象にはなりません。
また、受診した月の翌月1日から2年が経過した場合は時効になります。
70歳未満の高額療養費
高額療養費の自己負担額は、所得による区分判定で異なります。
毎年1月から7月は前々年、8月から12月は前年の所得により区分判定がなされます。
また、70歳未満か70歳以上かで所得区分の要件が違います。
計算に出てくる医療費は、10割分の金額をいいます。
70歳未満の所得区分ごとの自己負担限度額
①国保加入者全員の基準総所得金額合計が901万円を超える世帯
252,600円 +(医療費-842,000円)×1%
②国保加入者全員の基準総所得金額の合計が600万円超え901万円以下の世帯
167,400円 +(医療費-558,000円)×1%
③国保加入者全員の基準総所得金額の合計額が210万円を超え600万円以下の世帯
80,100円 +(医療費-267,000円)×1%
④国保加入者全員の基準総所得金額合計額210万円以下の世帯
57,600円
⑤世帯主及び国保加入者全員が住民税非課税の世帯
35,400円
70歳以上の高額療養費
毎年1月から7月は前々年、8月から12月は前年の所得により区分判定がされます。
①現役並み所得者Ⅲ
(国民健康保険に加入している70歳以上のうち、住民税の課税標準所得が最も高い人の金額が690万円以上ある世帯に属する人)
252,600円 +(医療費-842,000円)×1%
②現役並み所得者Ⅱ
(国民健康保険に加入している70歳以上のうち、住民税の課税標準所得が最も高い人の金額が380万円以上690万円未満の世帯に属する人)
167,400円 +(医療費-558,000円)×1%
③現役並み所得者Ⅰ
(国民健康保険に加入している70歳以上のうち、住民税の課税標準所得が最も高い人の金額が145万円以上380万円未満の世帯に属する人)
80,100円 +(医療費-267,000円)×1%
④一般
(現役並み所得者のうち、収入金額が一定未満として申請により認定された世帯に属する人)
個人単位18,000円、世帯単位57,600円
⑤低所得Ⅱ
個人単位8,000円、世帯単位24,600円
⑥低所得Ⅰ
個人単位8,000円、世帯単位15,000円
4回目以降の高額療養費の限度額
同一の世帯で、過去12カ月以内に4回以上高額療養費に該当した時は、4回目から限度額が異なります。
70歳未満
①国保加入者全員の基準総所得金額合計が901万円を超える世帯
4回目からの自己負担限度額 140,100円
②国保加入者全員の基準総所得金額の合計が600万円超え901万円以下の世帯
4回目からの自己負担限度額 93,000円
③国保加入者全員の基準総所得金額の合計額が210万円を超え600万円以下の世帯
4回目から 44,400円
④国保加入者全員の基準総所得金額合計額210万円以下の世帯
4回目から 44,400円
⑤世帯主及び国保加入者全員が住民税非課税の世帯
4回目から 24,600円
70歳以上(4回目以降)
4回以上高額療養費に該当する場合は、一定以上所得のみ変更されます。
①現役並み所得者Ⅲ 140,100円
②現役並み所得者Ⅱ 93,000円
③現役並み所得者Ⅰ 44,400円
④一般 44,400円
高額療養費の申請
高額療養費の支給方法には、①一度窓口で支払った費用を申請し、あとから現金で給付される償還払いと、②あらかじめ国民健康保険限度額適用認定証の交付を受けておき、受診時に国民健康保険証と限度額適用認定証を提出する現物給付とがあります。
①一部負担金を支払った後に高額療養費を申請する
高額療養費の対象となる医療を受けた月の翌々月以降に、高額療養費のお知らせについての書類が世帯主に届きます。
高額療養費を申請する場合は、支給申請書兼申立書に必要な事項を記入し、必要な書類とともに保険年金課に提出します。
・支給申請書兼申立書
・国民健康保険証
・印鑑
・預金通帳
②限度額適用認定証により自己負担額までの支払いにする
あらかじめ地域の区役所に行き、保険年金課保険係に国民健康保険証と印鑑を持参して申請することで限度額適用認定証の交付を受けます。
あとは受診時に限度額適用認定証を提示することで、月ごとの支払いを自己負担限度額までの支払いで済ませることができます。
持病があって毎月病院に通っていたり、高額難病を患って治療を継続しているなど、あらかじめ高額になることが分かっている場合におすすめです。
最後に一言
40歳で所得が500万円の人のその月の医療費負担が30万円(10割は100万円)だった場合の自己負担限度額は、
80,100円 +(100万円-26万7千円)×1%で、87,430円となります。
この結果、自己負担限度額を超える212,570円が高額療養費として支給されます。
高額療養費について重要なのは、こういった制度があることを知っておくことであって、細かい計算式を知る必要はありません。
また、市町村では、難病指定されている病気(潰瘍性大腸炎、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス等)について、医療費が助成されています。
高額療養費があるので、必要以上に将来を不安視して、無駄に過大な医療費に入る必要性はないかもしれませんね。