人生設計に大事な社会保険について

社会保険についての話

日本は外国に比べて解雇が難しい「解雇に関する法律」

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有期労働契約といった期間が決められている労働契約では、締結や更新、雇止めに関してルールが定められております。

労働者が働く場合の法律というと「労働基準法」を思い浮かべる人が多いと思いますが、法律で解雇を規制している法律は他にもあります。

男女雇用機会均等法では性別を理由にした解雇や、妊娠や出産を理由にした解雇などは制限されていますし、また、パートタイム労働法では通常の労働者と同視すべきパート労働者に、パート労働であることを理由に解雇することも制限されています。

法律上認められない解雇

労働契約法では、解雇が権利の濫用に当たる場合は解雇自体が無効となると規定されています。

労働契約法第16条

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない解雇は、権利を濫用したものとして無効となる。

 

また、有期労働契約の期間中に解雇をすることは原則できません。

労働契約法第17条1項

有期労働契約では、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間が満了するまでの間、解雇することはできない。

 

派遣労働者の場合、派遣先と派遣元の派遣契約が解除されたとしても、派遣元は新しい就業場所を確保するようになっています。また、派遣先の都合で派遣元が派遣契約を解除された場合は、派遣先は派遣労働者の新たな就業場所の確保や、休業手当の支払いといった措置を講じなければなりません(労働者派遣法)。

 

 

就業規則の解雇事由

労働基準法では、解雇の事由について就業規則に定めなければならないことになっています。

 

解雇の事由を含む退職に関する事項は、就業規則に必ず定めなければならない記載事項です。

また、就業規則は、常時見やすい場所に掲示するか、書面を交付するかして労働者に周知させなければなりません。

使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、第十八条第二項、第二十四条第一項ただし書、第三十二条の二第一項、第三十二条の三第一項、第三十二条の四第一項、第三十二条の五第一項、第三十四条第二項ただし書、第三十六条第一項、第三十七条第三項、第三十八条の二第二項、第三十八条の三第一項並びに第三十九条第四項、第六項及び第九項ただし書に規定する協定並びに第三十八条の四第一項及び同条第五項(第四十一条の二第三項において準用する場合を含む。)並びに第四十一条の二第一項に規定する決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。

 

会社が労働者に対して退職を勧奨した場合にも、権利の侵害に当たるとした判例があります。

退職勧奨は、労働者の家庭の状況や名誉感情等に十分配慮する必要があるとされました。

 

労働者数が余剰となった場合の整理解雇では、社会通念に沿う合理的な解雇であるかの判断がされるとされます。

客観的な理由を欠き、社会通念上合理的な解雇と認められない場合は、権利の濫用に当たるとして無効となった判例があります。

人員整理の必要があるか、人選の合理性があるか、企業が解雇をしないような努力をしたかなどが、判断基準の対象になりました。

 

労働者が、平均的な水準に達していないからといって直ちに解雇が認められるわけではないと判断された裁判例もあります。

裁判では、勤務成績が不良というだけで直ちに解雇したことを権利の濫用に当たるとして解雇を認めませんでした。

労働能力が平均的な数値に達していないというだけでは不十分であり、著しく能力が低いことに加えて、向上の見込みがないということも必要とされました(東京地決 平成13年8月10日)。

 

30日前の解雇予告

やむを得ない理由で解雇を行う場合は、30日前の予告が必要です。

30日前に予告が間に合わない場合は、足りない日数分の解雇予告手当の支払いが必要になります。

 

労働基準法第20条

使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合においてはこの限りではない。

第2項 前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる。

また、やむを得ず一定期間内に相当数の離職者が発生する場合は、届出や通知が必要です。

 

 

有期労働契約の更新及び雇止め

有期労働契約では、契約期間の他、労働契約を更新する場合の基準について明示しなければなりません。

 

労働基準法に基づいて厚生労働大臣が「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」について告示しています。

一.使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を三回以上更新し、又は雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限り、あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く。次条第二項において同じ。)を更新しないこととしようとする場合には、少なくとも当該契約の期間の満了する日の三十日前までに、その予告をしなければならない。

 

二.前条の場合において、使用者は、労働者が更新しないこととする理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

2 期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合において、使用者は、労働者が更新しなかった理由について証明書を請求したときは、遅滞なくこれを交付しなければならない。

 

三.使用者は、期間の定めのある労働契約(当該契約を一回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して一年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう努めなければならない。

 

以下の場合は、雇止めが認められない可能性があります。

一.有期労働契約が反復更新され、雇止めが解雇と社会通念上同視できると認められる場合

二.労働者が有期労働契約の満了時に、その有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由が認められる場合

 

労働契約法第19条

有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。

一.当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了させることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること。

 

二.当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること。

 

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