大学生などを対象にしたインターンシップは、教育の一環として位置づけられています。
インターンシップは、学生の就業体験を目的としていますが、実際には企業の採用活動になっていることもあります。
なかには企業がインターンシップを安い労働力として利用しているケースもあり、インターンシップをめぐるトラブルが増えています。
インターンシップとは
インターンシップは、学生が大学生のうちに自分の興味ある職種について就業を経験することができる制度です。
授業の一環としてインターンシップを実施している大学では、単位として認定されることもあります。
マイナビの調査では、過半数の企業がインターンシップを導入すると答えています。
また、学生の8割以上が、インターンシップに参加してよかったといっています。
インターンシップの形態としては、おおむね次の三つに類型されるとされています。
1.大学等における正規の教育課程として位置付け、現場実習などの授業科目とする場合です。
2.大学等の授業科目ではないが、学校行事や課外活動等大学等における活動の一環として位置付ける場合です。
3.大学等と無関係に企業等が実施するインターンシップのプログラムに学生が個人的に参加する場合です。
いずれにしても大学が積極的に関与することが必要とされています。
しかし、実際は企業の多くがインターンを受け入れているように、採用活動の一環としてインターンシップが行われているケースが増えています。
インターンシップは、アルバイトと異なる就業体験であるため、無給ということも多いです。
また、労働者ではないので労働基準法の対象外とされ、インターンシップ生を企業が都合よく利用しているといった声もあります。
無給、安い労働力として利用されていることもある
インターンシップは、本来は就業体験が目的ですが、実際には安い労働力として利用されていることもあります。
アルバイトは労働者なので最低賃金も適用されますが、インターンシップは労働者ではありませんから、最低賃金の適用外です。
お小遣い程度でも握らせておけばいいだろうと、交通費のみや安い報酬でアルバイトのように使用する企業もあります。
インターンシップとして受け入れられたとしても、その学生さんが直接的に生産活動に従事する等し、これらの作業によって企業に利益が発生することがあります。
さらに実際には企業と学生さんとの間に使用従属関係が認められたとしたら、これは労働と考えられます。
行政の発表した「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」でも、「インターンシップの実施にあたり、受け入れる企業等と学生の間に使用従属関係等があると認められる場合など、労働関係法令が適用される場合もあることに留意する必要があり、その場合には、企業等において労働関係法令が遵守される必要がある。」としています。
労働者として認められる場合は、最低賃金の適用がありますし、労災保険の対象にもなります。
インターンシップが学業に支障をきたしていることも
実際の業務に携われる実践型インターンシップでは、長期にわたって週に何日も参加が求められることがあります。
一般的なインターンシップでは関われないような業務を経験することができるのが魅力ですが、学校の授業を犠牲にしてインターンシップを優先させられるケースもあるようです。
途中で辞めたいと申し出ても、辞めさせてもらえないこともあります。
インターンシップ先から社員として勧誘されることもあります。
学歴はキャリアに一生影響しますから、勧誘に応じる場合でも大学はしっかりと卒業しといた方が良いでしょう。
内定直結型インターンシップでは、内定につながることから就職活動が有利になるメリットがあります。
しかし、インターンシップ中は企業もよく見せようとするのが普通です。
実際に入社してみたら、まるで別の企業だった……なんてケースも考えられますから注意が必要です。
企業も学生を他社に奪われないよう、内定後に研修やアルバイトの参加を求めるケースもあります。
現在は人手不足なので、労働力として参加させられることもあるようです。
しかし、内定と労働契約の扱いは違います。
内定だけでは研修への参加を義務付けることはできないのですが、内定取り消しを恐れて参加する学生は多いです。
しかし、研修やアルバイトへの参加を断ったことを理由に内定取り消しをすることは認められません。
採用内定の取消事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認することができるものに限られると解するのが相当である。
(最高裁昭和54年7月20日第二小法廷判決)
インターンシップ中に怪我をしたらどうなる?
インターンシップは、就業体験を目的としており、労働者ではありません。
労働者ではないわけですから、労災保険の対象でもありません。
学生教育研究災害傷害保険および学研災付帯賠償責任保険は、学生の教育研究などで起こる怪我や損害賠償に備える保険ですが、インターンシップで起こる怪我も対象にしています。
大学が関与しない場合のインターンシップでは、民間の保険会社が提供する保険で万一に備えることもできます。
インターンシップであっても、実際はインターンシップに名を借りた労働といったケースもあります。
もしも、労働者に該当するのであれば、インターンシップ中の怪我は労災保険の対象になります。
企業には安全配慮義務があります。
もし、インターンシップ生が怪我をしてしまい、安全配慮義務違反が認められれば、企業に損害賠償請求をすることもできます。
まとめ
インターンシップの本来の目的は、学生の就業体験です。
インターンシップが就職活動、採用活動の前倒しに利用されているケースが増えており、企業が制度を悪用する例も多いです。
インターンシップ中でも労働者と認められれば労災保険の対象になります。
インターンシップに参加してみて、疑問や悩みが出てきたら、大学のキャリア相談などに相談してみるとよいでしょう。