労働者が失業した場合や、雇用の継続が難しくなる場合および失業訓練を受けた場合などに、雇用保険では失業等給付が行われます。
失業等給付を行うことにより、労働者の生活を守るとともに求職活動のハードルを下げることで、再就職を目指すわけですが、この失業等給付には知られていない制度もあります。
多くの人に知られているのは、基本手当と教育訓練給付金くらいではないでしょうか。
失業等給付の種類
労働者が失業した場合や雇用の継続が難しくなる場合等に、雇用保険では失業等給付を行うことで労働者の生活の安定を図り、また、再就職の促進を目指します。
失業等給付は、求職者給付、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付に分けることができます
失業等給付
・求職者給付
・就職促進給付
・教育訓練給付
・雇用継続給付
被保険者の種類(一般被保険者、高年齢被保険者、短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者)によって対象者となる人とそうでない人に分かれます。
求職者給付
一般被保険者が対象の求職者給付
①基本手当
よく言われる失業手当は、この基本手当のことをいいます。
②技能習得手当
公共職業訓練等を受講した場合に支給される手当です。受講日数に応じて支給される受講手当と、交通費の通所手当があります。
③寄宿手当
同居の親族と別居して公共職業訓練等を受講する場合に支給されます。
④傷病手当
公共職業安定所に求職の申込みをした後、15日以上の傷病に罹った場合に支給されます。15日未満の場合は傷病手当ではなく基本手当が支給されます。
高年齢被保険者が対象の求職者給付
①高年齢求職者給付金
65歳以上の高年齢被保険者に対して支給される求職者給付で、基本手当日額に相当する額の30日、または50日分が一時金で支給されます。
短期雇用特例被保険者が対象の求職者給付
①特例一時金
短期雇用特例被保険者には、基本手当日額に相当する額の40日分が一時金として支給されます。
日雇労働被保険者が対象の求職者給付
①日雇労働求職者給付金
失業の日が属する月の前2月に印紙保険料の納付が通算26日分以上ある場合に支給されます。日額は7,500円、6,200円、4,100円のいずれか。
就職促進給付
就業促進手当
就職促進給付の就業促進手当には、就業手当、再就職手当、就業促進定着手当、常用就職支度手当といったものがあります。
①就業手当
アルバイトのような常用雇用以外の形態で就業した場合に支給されます。
②再就職手当
支給残日数が一定以上ある人が、安定した職業に就いた場合に支給されます。
③就業促進定着手当
6か月以上雇用され、再就職後の賃金が前と比べて低下した場合に支給されます。
④常用就職支度手当
就職困難者が安定した職業に就いた場合などに支給されます。
移転費
公共職業安定所の紹介で移転して就職した場合や、移転して公共職業訓練等を受講した場合に支給されます。
広域求職活動費
公共職業安定所の紹介により遠方に就職活動した場合などに支給されます。
短期訓練受講費
受給資格者等が平成29年1月以降、職業に関する教育訓練を受け修了した場合に、教育訓練経費の2割(上限10万円)が支給されます。1か月未満の短期の教育訓練が対象です。
求職活動関係役務利用費
受給資格者等が平成29年1月以降に求職活動で面接したり、教育訓練受講のため、子供の保育等サービスを利用した場合に負担費用が支給されます。
教育訓練給付
教育訓練には、一般教育訓練給付や専門実践教育訓練給付があります。
一般被保険者等が厚生労働大臣の指定する職業に関する教育訓練を受け、修了した場合に支給されます。
一般教育訓練給付金の額は、入学金および受講料の2割であり、上限額は10万円です。
専門実践教育訓練給付は、中長期的なキャリア形成に資する専門的かつ実践的な教育訓練として厚生労働大臣が指定した教育訓練を修了の見込みを持って受講した場合および修了した場合に支給されます。
専門実践教育訓練給付金の支給額は、教育訓練経費の50%(上限額は年間40万円)。
雇用継続給付
雇用継続給付は、雇用の継続を援助、促進することを目的に支給されます。
雇用継続給付には、高年齢雇用継続給付、育児休業給付、介護休業給付といったものがあります。
高年齢雇用継続給付
①高年齢雇用継続基本給付金
被保険者期間が通算5年以上ある被保険者で、60歳に達した日以後の賃金がみなし賃金月額の75%未満になったとき
②高年齢再就職給付金
基本手当受給後、60歳に達した日以後の再就職後の賃金が基本手当日額の算定基礎となった賃金月額の75%未満になったとき
育児休業給付
育児休業開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上ある人が育児休業をしたとき
介護休業給付
介護休業開始日前2年間にみなし被保険者期間が通算12か月以上ある人が介護休業をしたとき
おわりに
中国で発生した新型コロナウイルスにより、このままだと失業する人が80万人以上になるという予想がされています。
社会保険は、対象になる人でも申請しなければ受けられませんので、知っているか知っていないかは大きな差となります。
まわりに対象となる人がいる場合は教えてあげましょう。